2012年1月22日日曜日

『アンを探して』にみる中原淳一の挿絵、そして絵を描くこと



『アンを探して』(2009年、宮平貴子監督)は、急逝した祖母の初恋の相手を探すために、カナダのプリンス・エドワード島を訪れる17歳の少女の物語。

本作はタイトルを見れば分かると思うが、小説「赤毛のアン」が重要なモチーフとなっており、他にもバラの花、自転車など、魅力的な小道具がたくさん登場する。特に気に入ったのは、祖母役の吉行和子さんのナレーションとともに映し出される中原淳一の挿絵だ。




中原は昭和初期~30年代にかけて活躍した挿絵画家。終戦後には少女雑誌「それいゆ」「ひめゆり」を通して、貧苦にあえぐ少女たちに夢を与えた。映画は、彼のイラストが貼られたスクラップノートを見せることにより、祖母のはかない少女時代を想起させる。

一方、主人公の少女は祖母の死や自信のなさから絶え間ない不安の中にいる。彼女にとっての救いはノートに絵を描くこと。それは祖母がかつて中原淳一の挿絵を集めていた事と重なる。

そういえば自分の娘たちもよく絵を描いている。どれも漫画やアニメの中に登場する可愛らしい少女たちの模倣なのだが、一生懸命お絵かきにいそしんでいるのだ。

ちょうど小学校から帰ってきた次女が絵を描き始めたので聞いてみた。彼女は最初ポカンとしていたが、すぐに満面の笑みでこう答えた。

「えをかいているとね、きれいなきもちになるんだよ」

絵を描くという行為は己の内面を見つめ、同時に心を浄化する作用があるのだろう。子どもたちはそれを自然と知っているからこそ、一心不乱に絵を描くのだ。

そんなことを考えると、部屋中に散らかされた娘たちの絵が愛おしく感じられた。

※本記事とイラストは、沖縄タイムス2011年5月1日掲載の連載コーナー「シネマのアレ」記事を加筆修正したものです。

0 件のコメント:

コメントを投稿