2009年5月4日月曜日

ボンクラの妄想大爆発!~『ウォンテッド』


今さらながら『ウォンテッド』(`08)をDVDで見たのだけれど、いやあ驚いた。

男なら誰しも持っている妄想をビッチリと隙間なく埋め尽くした素晴らしい(良い意味で)ボンクラ映画だったのだ!




主人公はストレスを極限まで溜め込んだダメサラリーマン。

同棲している彼女はアホな同僚と堂々と浮気しているし、デブな女上司にはねちねちねちと嫌みを言われ、かと言って反抗するほど度胸も無く、二言目には「すみません」と繰り返すばかり。



彼の目の前に広がるのは、夢も希望も無いどん詰まりの人生…。



『ウォンテッド』は世界中にごまんといる金も才能も無い俺たちのような凡人の日常から始まる。もちろん、思いっきりカリカチュア(戯画化)しているので笑えるのだが、観客はいつしか自分自身の日常を見せられているようなイヤな感覚に陥るはずだ。



そんなボンクラ人生を歩む主人公に急転直下の展開が訪れる!



 いつものようにコンビニのレジに並んでいると、話しかける絶世の美女が。よく見ると、“ハリウッド史上最強の姉御”アンジェリーナ・ジョリーではないか。

だが驚く暇もなく、アンジェリーナは謎の男と銃撃戦を展開。かっちょいいスポーツカーで町中をぶっ壊して逃走。拉致した主人公に「あなたは選ばれた人間なのよ」と1000年の昔より続く正義の暗殺組織に誘う。



よく分からないままに主人公はクンフー映画もまっ青の過酷な修行を始めることになる。



この修行というのがこれまた トンデモナイ。椅子に縛り付けてボコボコに殴られ、肉屋と対峙して肉切り包丁でプスプス刺され、高速で動く自動糸織機のシャトルを取ろうとして鋭利な部品
に手をざっくり切り刻まれる。主人公は瀕死の重傷を負うのだが、どうかご安心を。都合の良いことに、この組織には一夜入ればどんな傷も治ってしまう薬用風呂が用意されているのだ!



というわけで主人公は、



半殺し→薬用風呂→半殺し→ 薬用風呂→半殺し…の狂気のループを繰り返しながら、わずか数週間で、拳銃の弾道さえも精神力でぐにゃりと曲げるプロのヒットマンになることに成功する。
ついでに莫大な報酬が口座に振り込まれて、むかつく職場にもサヨナラしてしまって万々歳! まさに我が世の春! ひゃっほーーー!!!



…あまりの厨二病ストーリーに「そんなアホな!」と思われる御仁もいると思われるが、映画はそもそも100年の昔よりボンクラな観客たちに「俺だって実力さえ出せば…」と罪深い夢を抱かせるような妄想を提供してきた罪深き装置だった。

それを考えれば、『ウォンテッド』は映画の役割を忠実に果たしている素晴らしい傑作、と言っても良いかもしれない。



「けど映画は所詮映画。現実にあるわけねーべ…」とため息をつく方がいるかもしれない。そんな希望の無いあなたには、本作の監督をつとめるティムケール・ベクマンベトフをご紹介したい。





彼は中央アジアの片田舎カザフスタン出身。ハリウッドの大作を見続けてきたティムケールは、「俺も派手派手なSFX使った映画を作るべ」と一念発起し、ロシアに上京。1000年の昔より続く光と闇の戦い(あれ、どっかで聞いたような話…)を描いた『ナイト・ウォッチ』(`04)『デイ・ウォッチ』(`06)でロシアにおける映画興行収入を塗り替え、あこがれのハリウッドに招かれる。そして『ウォンテッド』でいきなり売れっ子監督の仲間入りを果たしてしまったのだ。彼こそ、まさに厨二病的妄想を現実にしてしまった素晴らしきボンクラだったのだ。





ティムケールのそんなエピソードをアタマに浮かべながら本作を見ると、さらに面白く見ることが出来るはずだ。


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